イギリスの大学院留学、ここが大変!

私は、実はイギリスの大学院生である。

「実は」と、もったいぶって言うほどの事でもないが、大学院生である。

 

イギリスに留学した日本人は今も昔も山ほどいて、かつては文豪、夏目漱石も留学に来て、そしてやや精神を病んでしまったとか。

日本人のイギリス留学者ブログはそれこそ星の数ほどあるが、私が思うイギリス大学院留学の大変さを書き連ねようと思う。

 

【異国に住む】

漱石の気持ちは理解できる。自国を離れると途端に自分はマイノリティになり、生活の勝手の違いに戸惑い、「英語はそこそこ出来るぜ~」と思って現地に来てみると、自分が知らない表現を多数ネイティブが話している。スピードが速い。そもそもBBCニュースのような話し方はしてくれない。些細なことでも「fu**ing ...」とまくし立ててしゃべっている。彼らは紳士淑女ではないのか、こう思うわけである。さらには、こんな日常会話で聞き取れないことがあって大学院という高等教育機関を卒業できるのか、そんな考えも頭にちらつく。

 

しかし現代の留学は夏目漱石の時代とは全く異なる。ホームシックになることは少ないだろう。なぜならスマートフォンの中には遠い故郷の友達の近況を見たり、連絡を取る手段がたくさんある。加えて、分からないことがあればインターネットですぐに調べることができる。

言語の壁も、現代の文明の利器を用いれば、英日翻訳は容易だろう。

無論、自分の語学力向上には役立たないので、最低限にとどめるべきなのは言うまでもない。

 

それでは、異国に住むと何が一番大変なのか。

これは人により異なると思うが、個人的に日本と大きく異なり困るのは気候である。イギリスは、言わずと知れた天気の悪い国である。天候が変わりやすい上に、2週間ほど太陽を見ることができないこともあった。東京や大阪等の雪の降らない都市圏と比較すると、イギリスの方が寒い。体調を崩さずに過ごすことが重要だ。

また、食事の違いである。現地の料理が口に合わない場合も多い。そもそもイギリスは料理がまずいフランス等の近隣ヨーロッパ諸国に比べて人気が劣るのは仕方がないことだが、味付けの仕方が特に下手くそであると感じている。学食を一度食べてそう思った。

基本的には、私は、自炊をしているが、アジア系のスーパーマーケットで食材や調味料を購入すると料金が高いことが問題である。

全体的に物価が高いことも日本人学生にとっては辛いところである。

円安の影響で1ポンド約187円である(現地2024年1月18日1時15分頃)。狂っているとしか言いようがない。

金銭面での負担は数年前に増して高まっているのではないか。

 

【大学院レベルの学習】

大学院に進学をするとは大学院レベルの勉強をすることだ。

まるで小泉進次郎代議士の発言から巷で言われるようになった「小泉構文」のような文章だと笑うことなかれ。

入学してから繰り返し、教授陣に言われた言葉がある。それは、「あなたたちは修士課程の学生である」ということだ。

 

イギリスにおける修士過程は、研究者になるための博士課程の準備であるとの意味合い

が強く、それ故、修士過程を舐めるなよと学生に警告しているわけである。もちろん、全ての学生が博士課程に行くわけではない。しかし、博士課程に進学を希望する人も想定した上で高い水準の努力を求めているということである。

心構えとして勉学に勤しむ気持ちを身につけたとして、具体的には何が問題になるのか。

【アカデミックライティング】

日本人学生にとっての関門はアカデミックライティングである。

単位を取得できるか否かは多くの場合、エッセイライティングやレポート、論文等の出来により左右される。アカデミックライティングとはその肝である。

 

つまり、自分の考えを引用を用いて適切に表現することである。

このためには、引用する文献を正しく批判的に理解・解釈し、その理解・解釈を幅広い語彙により表現し、引用文献を適切に示す必要がある。

 

【学習に際限がない】

例えばエッセイを書く場合に、教授に事前に参考文献の相談をすることはできるが、あくまで自己の主張を論じるのが目的である。そのため、自己の主張を裏付けるための論文を探さなければならない。しかし、皮肉なことに、自分の主張に合う論文を探すのではなく、論文を読んで、その内容を批判的に解釈して、複数の論文の情報を統合してエッセイを書かなければならない。この意味でエッセイの内容は、自分が呼んだ論文(本やジャーナルなど)の範囲内でしか、論理的にはエッセイを書けないと言うことになる。

より良い考えを得たければ、多くの文献を読まなければならないが、それは際限がない。

従って、際限がないからこそ、際限を自分で設定することが重要だと考える。

自分の研究範囲を意図的に絞ることで、自分の研究全体をコントロールできるようになるはずだ。このあたりの感覚を得るのがまだ先になりそうだ。

 

【留学目的の違い・時間管理】

当然、大学院留学はワーキングホリデーや語学留学と異なる。

留学の本旨を自分で見極め、それに向かって日々の学生生活を送ることがイギリス大学院留学の鍵と言える。

しかし留学しているからにはイギリス国内を旅行したり、ヨーロッパ圏の国々を訪れたい、あるいは何かイギリスでなければ経験できないこと、例えばプレミアリーグを観戦したいなど、学問以外のやりたいこともたくさんあるはずである。

従って、時間管理がとても重要となってくる。

やるべきことの優先順位付けと、その実践を常に行うことが求められる。それ故、自律した生活を送る必要がある。

 

【その他】

私自身、考えのつたなさや専門分野に関する知識の薄さ、知識があってもそれを上手く統合し自分の意見として伝えることが出来ないもどかしさと戦っている。しかし、これらも訓練というか実践して行く上で「より良い考えの仕方を身につけたり、より良い意見の発表が出来るようになるのだ」と自分に言い聞かせて、考えを深めるように努力をしている。考えは自分で文字に起こして可視化したり、人と対話しなければ、涵養されないと思うので、些細なことでも自分の意見を持つようにしている。

 

【最後に】

もし同じ境遇にいる人がいたら共に頑張ろう。また、イギリス大学院を志して勉強している日本の学部生がいたら、その目標が達成できるよう願っている。